2025.07.03
【保存版】大規模修繕工事でサッシはどうなる?共用部分?費用は?交換のメリットまで徹底解説

大規模修繕工事の計画が進む中で、多くの住民の方から「窓やサッシも新しくなるの?」という質問が寄せられます。毎日使う身近な部分だからこそ、関心が高いのは当然です。
しかし、マンションの「サッシ」は、大規模修繕の中でも特に取り扱いが複雑で、管理組合の頭を悩ませる問題の一つです。
この記事では、
- そもそもサッシは「共用部分」か「専有部分」か?
- 修繕の選択肢には何がある?
- 交換する場合の費用負担はどうなる?
- サッシを新しくするメリットは?
といった疑問について、管理組合の皆様が知っておくべき知識を網羅的に、そして分かりやすく解説します。
大前提:サッシは「共用部分」か「専有部分」か?
この問題が、サッシの取り扱いを複雑にする最大の理由です。 結論から言うと、マンション標準管理規約では、サッシ(窓枠・ガラス)は「共用部分の専用使用部分」と位置づけられています。
- 共用部分である理由: サッシは建物の外壁と一体であり、マンション全体の防水性、気密性、耐風圧性、外観の統一性などを保つための重要な構造物です。個人の判断で勝手に交換すると、建物全体の性能や安全性に影響を及ぼす可能性があるため、共用部分とされています。
- 専用使用部分である理由: 共用部分ではあるものの、実際にはその部屋の居住者だけが日常的に使用するため、「専用使用権」が認められています。
【重要】最終的な判断は「管理規約」による 上記の解釈はあくまで標準的なものです。最終的には、ご自身のマンションの管理規約にどのように定められているかを確認することが最も重要です。規約によっては、サッシを専有部分と定めているケースも稀に存在します。
大規模修繕工事におけるサッシの選択肢
サッシの取り扱いには、主に「補修(修繕)」と「交換」の2つの選択肢があります。
- 補修(部分的な修理)
既存のサッシをそのまま使用し、不具合のある部分だけを修理する方法です。
- 主な補修内容:
- 戸車の交換・調整(窓の開閉をスムーズにする)
- クレセント錠の交換・調整
- 気密材(ゴムパッキンなど)の交換
- サッシ周りのシーリング(コーキング)の打ち替え
メリット: 費用が安価。
デメリット: 断熱性や遮音性といった根本的な性能は向上しない。あくまで対症療法であり、数年後に再び不具合が発生する可能性がある。
- 交換(新しいサッシに取り替える)
既存のサッシを撤去し、新しいサッシに入れ替える方法です。現在のマンションサッシ交換では「カバー工法」が主流です。
- カバー工法とは? 既存の窓枠を残したまま、その上から新しい窓枠を被せて取り付ける工法です。
- メリット:
- 工事が1窓あたり数時間〜半日と短時間で済む。
- 壁を壊す必要がないため、騒音や粉塵が少ない。
- 費用が比較的安価。
- デメリット:
- 既存の枠の内側に新しい枠が付くため、窓の面積がひと回り小さくなる。
- メリット:
- はつり工法とは? 壁を壊して既存のサッシを完全に取り外し、新しいサッシを取り付ける伝統的な工法です。
- メリット:
- 窓の大きさが変わらない。
- デメリット:
- 壁を壊すため、騒音・粉塵が大きい。
- 工事期間が長く、費用も高額になる。
- 内装や外壁の補修も必要になる。
- メリット:
知らないと損!サッシを交換する5つの大きなメリット
サッシの交換は単に古くなったものを新しくするだけではありません。居住者の生活の質(QOL)を向上させる大きなメリットがあります。
- 断熱性能の向上 → 冷暖房費の節約 最新のサッシ(特に複層ガラスやLow-E複層ガラス)は断熱性が非常に高く、夏は涼しく冬は暖かい快適な室温を保ちやすくなります。結果として、冷暖房費の削減に繋がります。
- 結露の抑制 断熱性の向上は、冬場の悩みの種である「結露」を大幅に抑制します。これにより、カビやダニの発生を防ぎ、健康的な住環境を維持できます。
- 遮音性能の向上 気密性が高まることで、外部の騒音(車の音、電車の音など)が室内に伝わりにくくなり、静かな生活環境が実現します。
- 防犯性能の向上 最新のサッシは、複数のロック機構を備えるなど、防犯性が高められています。
- 資産価値の向上 断熱性や遮音性といった住宅性能の向上は、マンション全体の資産価値を高める重要な要素となります。
【最重要】費用負担と合意形成の進め方
サッシを大規模修繕工事で交換する場合、その費用負担と意思決定のプロセスが最も重要なポイントとなります。
費用負担のパターン
- 修繕積立金から支出するパターン 管理規約でサッシが「共用部分」と明確に定められており、管理組合としてマンション全体で一斉に交換すると決議した場合、修繕積立金から費用を支出できます。
- 個人負担となるパターン 管理組合としては交換を強制せず、希望する住戸のみが交換する場合です。この場合、費用は各区分所有者の個人負担となります。ただし、管理組合が窓口となって共同購入の形をとることで、個人で申し込むより費用を安く抑えられる可能性があります。
合意形成の進め方
マンション全体で一斉にサッシを交換(パターン1)するには、原則として総会の「特別決議」が必要です。これは、「区分所有者数および議決権の各4分の3以上」の賛成が必要となる、非常にハードルの高い決議です。
この高いハードルを越えるためには、以下のステップを踏むことが不可欠です。
- アンケートの実施: 全住民を対象に、現在のサッシに対する不満(結露、開閉のしにくさ、隙間風など)や、交換への意向を調査します。
- 説明会の開催: アンケート結果を共有し、サッシ交換のメリット・デメリット、費用、工事方法などを丁寧に説明する場を設けます。
- 広報活動: 広報誌や掲示板などで、交換の必要性やメリットを継続的に発信し、住民の理解と関心を高めます。
まとめ
大規模修繕工事におけるサッシの取り扱いは、法律(区分所有法)、マンションごとのルール(管理規約)、そして技術的な問題(工事方法)が絡み合う複雑なテーマです。
しかし、サッシの性能向上は、日々の快適性や光熱費の削減、ひいてはマンション全体の資産価値向上に直結する重要な投資です。管理組合としては、サッシが「共用部分の専用使用部分」であることを前提に、住民の皆様の意見を丁寧に集約しながら、補修で済ませるのか、あるいは将来を見据えて交換に踏み切るのか、長期的な視点で検討を進めることが求められます。
この記事が、皆様のマンションの価値をさらに高めるための一助となれば幸いです。
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